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「イコンはロシア人の魂である」23歳のイコン画家の巨匠の仕事の仕方

若きイコン画家の巨匠アンナ・コルニロワは、自分のイコンの作品で古代芸術を再解釈する。私たちは彼女に、なぜこの職業を選んだのか、イコン画家の収入はどれくらいなのか、そしてイコンがロシア文明にとってどのような重要性を持っているのかについて話を聞いた。

アンナのグラフィックアート
アンナ・コルニロワ

 素人には、正教のイコンはすべて同じように見える。確かに、イコン絵画の規範はイコンが聖像の神聖さを失うことを許していない。これにより厳格さと祈りが実現される。

アンナと先生
アンナ・コルニロワ

 しかし、このことが現代のイコン画家が独自のスタイルで描くことを妨げるわけではない。23歳のアンナ・コルニロワは、イコンを古代の聖像の服の折り目が同じように繰り返される単なるコピーではなく、芸術作品として再考している。

 繊細なパステル調の色合い、深みのあるディテール、絵画のような美しさと調和のとれた色の組み合わせ、コントラストの工夫、そしてデザイナーのようなグラフィックパターンの使用さえも、コルニロワのイコンの特徴である。

三位一体のイコン。
アンナ・コルニロワ

 彼女はミンスク国立芸術専門学校で学んだ。同級生がグラフィックデザイナー、モーションデザイナー、アニメーター、タトゥーアーティストを目指して勉強している中、アンナはイコン絵画を学ぶことを固く決意した。彼女はこのように簡潔に説明した。「私は心の中で古代のイコンの世界に大きな興味を感じていました。そこにはあまりにも多くの秘密があるので、それらを明らかにするには一生かかっても十分ではないように思えたのです」そのため、アンナはロシアに来て、モスクワ神学アカデミーのイコン絵画学部で学んた。

 すぐにはうまくいかなかった。彼女は最初のイコンの製作作業をこう思い出した。「どれだけ苦労したことか… 5回も消しました! そのたび最初からやり直さなければいけませんでした。色が合わなかったか、層が厚すぎたか...。もう諦めようと思うたびに『結局イコン絵画は私に合っていないのではないか?』という考えが浮かんだことを覚えています。これまでずっと水彩絵の具で描いてきた私にとって、エッグテンペラで絵を描くという新しい技法に慣れるのは非常に困難でした。一筆の塗り跡が不均一で、丸まってしまい、塗りつぶそうとしましたが上手くいきませんでした。神の助けで、私は少しずつ、苦労しながらタブレット(カンバス上の小さな両面イコン - 編集者注)を完成させました!」

非世俗的な生活

 イコン画家は珍しいアーティストだ。イコン画家は絶えず祈り、断食期間を守るので、ある意味で自分が描く聖人に精神的に近づくことができる。少なくとも教会はそう言っている。

救い主のイコン。
アンナ・コルニロワ

 イコンを描く際の主なルールは、心が落ち着いていないときに描かないことだ。アンナは教会の聖歌の録音、聖人たちの生涯、福音書、などで自分の仕事の準備を整え、日常生活に関する仕事に不要な考えを追い払う。

神の母のウラジーミルのイコン。
アンナ・コルニロワ

 「イコン画家にとって、仕事の過程において、祈りの心を持とうと努めることは非常に重要です。なぜなら、イコン画家は本質的には神の手によって筆を持っているからです。イコン画家は神の助けを得てイコンを描いていいるのです」とアンナは説明する。

聖ニコラスの家族のイコン。
アンナ・コルニロワ

 個人のお客様や教会からの注文もあり、一日中働かなければならないこともある。

 「手のひらより少し小さい小さな像は 1日で描くことができますが、教会のための大きな像を描くには何年もかかることがあります」と彼女は言う。「でも、私にとってイコンの数はそれほど重要ではありません。重要なのは、描かれたものが何をもたらすか、祈りによってどれだけ多くの魂を救うことができるか、どれだけの人を慰め、どれだけ多くの喜びを与えるかということです」

 現代のイコン画家の平均収入は、主に個人的な注文を受けている場合、月に5万ルーブルほどだ。アンナ・コルニロワのイコンの価格は8000ルーブルからだ。主にロシアとベラルーシの顧客から注文が入る。彼女は彼らを「誰かに価値のある贈り物をしたいと思う素朴な人たち」と表現する。

 業界には多くのイコン画家がいるが、ロシアには購入に多額の費用を費やす大口顧客、つまりコレクターがほとんどいなくなった。

 競争が激しいと、職人たちはイメージや顧客の好みといった外的品質に焦点を当て、市場の状況に適応するようになることがよくある。しかし、アンナはこれは不適切だと考えている。

 コルニロワによると、その静かな美しさと雄大さを備えたイコン絵画は、ロシア文明の主要な象徴の1つであるという。彼女によれば、ロシアではイコンほど包括的な意味を持つ芸術現象は一つもなかったという。

 では、ロシアのイコンはどのようなものなのだろうか? アンナはこう答えた。「静かで、祈りに満ち、揺るぎない、底知れず、柔和で、非常に豊かな…。これらすべての言葉でロシア人の魂を表すこともできます。ロシア人は外見的には素朴ですが、内面的には神において非常に豊かです」