GW2RU
GW2RU

モスクワのロシア・イコン博物館の目玉展示10点

ロシアのイコン(聖像)博物館
キリスト教美術を専門とするロシア最大級の民間博物館では、14世紀~21世紀初頭までのイコンなどの美術遺品4000点以上を所蔵している。中でも展示の目玉となっている品々をご紹介しよう。

1.大天使ミハイルのイコン、1560年代

ロシアのイコン(聖像)博物館

 このヴォログダ市のイコンから、メセナのミハイル・アブラーモフ(1963~2019)のコレクションが始まった。そのコレクションが拡大して、2006年に博物館をオープンするに至る。現在、博物館には創立者の名が冠せられている。

2.聖ニコライ像、14世紀中盤

ロシアのイコン(聖像)博物館

 奇蹟者ニコライは、ロシアで最も篤く敬われている聖人の1人である。この像は博物館の所蔵品の中では最古の品。博物館のコレクションに加わる以前は、ペテルブルクの画家Y.S.イェルショフの所蔵品だった。イェルショフが1967年、ロシア北方の打ち捨てられた木造礼拝堂内で発見したものである。

3.ゲオルギーと竜の奇蹟、16世紀初頭

ロシアのイコン(聖像)博物館

 ノヴゴロド市のこのイコンには、初期キリスト教の聖人ゲオルギー(ゲオルギオス)が、恐ろしい竜を相手に闘う姿が描かれている。1970年代にソ連の熱心な個人コレクターが発見した作品で、キリスト教美術の傑作として認定された。

4.主の顕現、16世紀初頭

ロシアのイコン(聖像)博物館

 主がヨルダン川で洗礼者ヨハネによる洗礼を受ける場面が描かれている。制作者はモスクワの職人で、この作品は200年にわたってイコノスタシスの祝祭の列を飾ってきた。当時は長方形だった。この列の他のイコンはソ連時代に国外に売却され、主の顕現イコンだけがロシアに戻ってきた。

5.預言者ギデオン、15世紀中盤

ロシアのイコン(聖像)博物館

 かつて古儀式派のミハイル・チュワノフが所有していたイコン。チュワノフは1988年にコレクションの大部分を国立プーシキン美術館に寄贈した。彼の保管庫には今も、イコノスタシスの同じ預言者たちの列にあった預言者ダニエルのイコンが保管されている。

6.モジャイスクのニコラのイコン、16世紀

ロシアのイコン(聖像)博物館

 原型となっているのは、国立トレチャコフ美術館が所蔵しているモジャイスクのニコラの木像である。14世紀の作で、剣を持った聖ニコライの等身大の像。左手に持っているのはモジャイスクの街を象った模型で、聖ニコライは同市の救い主にして守護者である。

 ロシア・イコン博物館は2010年にこのイコンをウラジーミル市で入手した。おそらく、かつてはニコライ堂の1つが所有していた品と推定される。 

7.全能の救世主、16世紀

ロシアのイコン(聖像)博物館

 このロストフ市のイコンは、世襲のコレクターであるセルゲイ・ヴォロビヨフがイズマイロヴォの蚤の市で購入したもの。彼の鑑定眼は確かで、作品は当初考えられていた以上に古く、もとの絵の上に重ね描きされていたことが分かった。

8.ウソリスキーの折り畳み聖像、17世紀

ロシアのイコン(聖像)博物館

 三幅対の折り畳み式聖像で、ヴャトカ及び大ペルミ主教アレクサンドルの注文で制作されたもの。オディギトリアの聖母、ヘクサメロンの場面、諸聖人の祝日の3つの画で構成されている。

9.オディギトリアの聖母、1670年代

ロシアのイコン(聖像)博物館

 このイコンはツァーリのアレクセイ・ミハイロヴィチのお抱え宮廷イコン画家、シモン・ウシャコフの作である。1990年代にコレクターのヴィクトル・サムソノフがモスクワの実業家の所蔵品から発見した。この傑作はクレムリンの武器庫にあったものだったと判明したが、長年にわたって誰もそれに気付いていなかった。

10.カザンの聖母、19世紀末

ロシアのイコン(聖像)博物館

 美しいエナメル製のリザがまばゆいこのイコンは、ニコライ2世の第二皇女タチアナが所有していた。1913年、ロマノフ王朝300周年に至聖三者セルギイ大修道院から贈られたもの。タチアナ皇女は革命後にシベリアに流刑された時も、このイコンを持参した。ニコライ一家処刑後は国外に売却されている。2011年、ロシア・イコン博物館はアメリカのコレクター、イオン・ザイデリマンから本品を含む100点以上のイコンを買い取った。

 本記事の作成にあたりロシアナビはロシア・イコン博物館にご協力いただきました。